自社で独自の商品・サービスを市場に出したいという場合、商品・サービスの準備から提供までのすべての工程を自社単独で実行する場合もありますが、いずれかの工程で他社と協業する場合も多いと思います。その場合、知財に関してどのような点に注意すべきでしょうか?
例えば、新たな商品・サービスを提供したいという場合、いきなり新商品・新サービスが登場するわけではなく、コンセプトの決定、市場調査、技術開発、商品開発、量産等々の様々な工程を経てようやく新商品・新サービスが世の中に登場します。こういった複数の工程を自社単独で行うことができる企業もありますが、多くの場合、どこかの工程については他社と協業することや他社に委託することになります。
そして、他社と協業するためには、自社が考えている商品・サービスの内容を当該他社に開示しなければならない状況が発生します。この場合、自社がどのような知財を持っているのかを他社に理解してもらった上でビジネスを進める必要があります。
ここで、知財は「知的情報のかたまり」であることから、もしも知財について何も対処せずにいったん外に出してしまうと、「情報」は実体がある有体物とは異なり、コピーが容易で劣化もしないことから、そのままの状態で世の中に簡単に広まってしまいます。
そこで、他社に知財を公開する場合、秘密保持を要する知財を明確に特定し、また、秘密保持期間等を明確に規定した秘密保持契約(NDA)の締結が必須となります。NDAを締結せずに知財を公開してしまうと、公開した知財が他社から更に外に漏れてしまうことを防ぎようがないからです。
また、他社と協業する工程によっては、共同研究開発契約や業務提携契約等の各種の契約を締結することも必要になる場合があります。
更に、他社との協業で新たな知財が生まれた時の取り扱いや協業によるビジネスにより得た果実の分配も事前に協議して決めておく必要があります。この取り扱いを決めておかないと、生まれた知財の帰属をめぐった争いや果実の取り分を巡った争いが起こることになりかねません。場合によってはせっかく生まれた知財が日の目を見ないこともあります。
したがって、他社との協業が必要になる場合、知財担当者は、自社の知財について秘密を保持するか否かの取り決めや、新たに生まれた知財やビジネスにおける利益の取り扱い方等について予め協議し、適切な契約書を締結することが重要になります。
by 今 智司
