知的財産権は、適切に利活用することでビジネスに大きく役立ちます。一方で、「小さな知財部~知的財産権維持には「年金」が必要」でご紹介したとおり、権利を維持するためには、原則として毎年、特許庁に所定の年金を支払い続けなければなりません。
特許権や商標権等の知的財産権には存続期間が定められていますが、たとえ存続期間中であっても年金を支払わないと権利は抹消されてしまいます。
しかし、権利維持のために年金を支払わなければならないということは、権利の維持が必要なくなった場合は年金の支払いをやめればよい、ということにもなります。
日々、ビジネス環境は変化していきますが、環境の変化によってこれまで利活用できていた知的財産権が、自社ビジネスにあまり役立たなくなることも起こりえます。その場合、これまで利活用していた知的財産権の取扱を決めなければなりません。
上記のように単純に年金の支払いをやめ、知的財産権が抹消されるに任せるという方法もありますが、特許権や商標権等の知的財産権は、第三者に譲渡することやライセンスすることも可能です。
そのため、知財担当者は、自社の知的財産権が自社事業のどこにどのようにして用いられており、環境変化に基づいて自社の知的財産権を自社でそのまま使うのか否か、自社事業にとって自社では使わないものの、他者が使う可能性があるのか否か等を諸々検討した上で、
①年金の支払いをやめて権利を抹消させる、
②第三者にライセンスしてライセンス収入を得る、
③第三者に譲渡して譲渡対価を得る(ただし、この場合、この第三者の許諾なしに自社では実施できなくなります)、
というような取り扱いを決める必要があります(つまり、棚卸する必要があります。)。
知的財産権が消滅すると、その知的財産権の排他的効力や独占的効力がなくなるので、自社ビジネスとその知的財産権との関わり合いを慎重に評価した上で取り扱い方を決定することが重要になります。
なお、知的財産権、例えば、特許権という権利がなくなったとしても、その基になった「知財」(特許の場合は発明)が自社から消滅したわけではありません。権利が消滅したとしても、自社内でその権利の基になった知財は自由に使うことができます。
もちろん、その前提として当該知財を「見える化」して蓄積しておき、自社の人々がいつでも使えるようにしておく必要があります。
このように知財は、たとえ当該知財の権利としての側面が薄れたとしても、自社内に蓄積して繰り返し利活用可能な状態にしておくことで、自社の現在及び将来のビジネスに有効活用することができます。
知財担当者はこの点を忘れずに知財の棚卸をしていくことが求められると思います。
by 今 智司
