小さな知財部~出願するまでは知られてはならない!‐新規性と新規性喪失の例外

 今回は特に、特許、実用新案、及び意匠での「新規性」に関する話題です。各法域についてほぼ同様ですので、以下では特許を題材にご紹介します。

新規性とは

 発明の新規性については、コラム「アイデアの公開前に特許出願の要否の検討を」でも述べていますが、とても大事なことなのでここでも簡単に説明します。

 既に世の人々に知られている発明について特許が与えられるとしたらどうでしょう?これまで誰もが自由に使えていた発明が、ある日を境に特定の人しか使えなくなってしまいます。発明という知財は情報であり、パブリックドメインと化した情報を誰かに独占させることは、どう考えてもおかしいことです。

 そのため、特許が付与される発明には世の中に知られていないこと、つまり、公知でないことが求められます。公知でない発明が「新規性のある発明」となります。

新規性の判断タイミングは出願時

 そして、新規性の判断基準は特許出願です。ある発明について特許出願した時(時分についても問題となります)に公知でなければ、その発明には新規性があります。

 そのため、例えば、今日の午前中にこれまで公知ではなかった発明Aについて特許出願した後、午後に発明Aをインターネットで公開したというような場合、特許庁での審査において特許出願した発明Aには新規性があると判断されます。

 また、10年前に発明Bをし、発明Bを営業秘密として適切に取り扱い、これまで発明Bが公知ではなかった場合、本日時点で発明Bには新規性があるということになります。

 すなわち、ある発明について新規性があるか否かの判断は、その発明が特許出願の時に公知であるか否かによるのであり、その発明が特許出願時点で絶対的に新しい、ということではないということになります。大昔に生まれた発明であっても、公知になっていなければ「新規性はある」ということになります。

 したがって、発明について特許を取得したい場合、特許出願するまでは公知にならないようにする、つまり、知られないようにすることが重要になります。

新規性喪失の例外

 このように発明の「新規性」が特許を取得するために必要となるのが原則です。しかし、原則をごり押しするとかえって出願人に多大な不利益を与えることもあります。

 例えば、新製品を展示会に発表したりテスト販売したりして、その結果が良ければ大々的に市場に投入するプロセスをとることがあります。このような場合に展示会発表やテスト販売に先立って特許出願しなければならないとすると、結果として評判が良くなかった製品についても特許出願し、その費用が無駄になったりする場合があります。また、発表前に焦って大急ぎで特許出願書類を作成しなければならず、書類に不備が含まれやすくなったりする場合もあります。

 そのため「新規性喪失の例外」という規定が設けられています。

 この規定を利用すると、例えば、今日、D社が発明Cをプレスリリースで公開してしまったとしても、公開してから1年以内に特許出願し、出願から30日以内に所定の手続をすれば、本来、プレスリリースで公開したことにより発明Cについて新規性が失われていたところ、この公開によっては新規性が失われなかったとみなしてくれます

 ただし、新規性喪失の例外はあくまで例外規定です。そのため、第三者が同じ発明CについてD社のプレスリリースより先に公開していた場合は発明Cについて新規性はありません。また、発明Cのプレスリリース後、D社より先に第三者が発明C(第三者が偶然、独自に発明)について特許出願していた場合、D社は第三者の後願として特許を受けることができません。なお、この場合、第三者はD社がプレスリリースした発明Cによって新規性がないとして特許を受けることができません。

 更に、海外でも特許を取得したい場合は注意が必要です。アメリカや韓国等のように日本の新規性喪失の例外規定と同様の規定がある国はよいのですが、そうではない国(例えば、欧州各国等)では発明Cが既に公開されていると、発明Cについて特許を受けることができなくなります。

 したがって、新規性喪失の例外という手続はあるにはありますが、なるべく、新規性喪失の例外規定を用いずに特許出願することがよいといえます。

知財担当者が念頭に置くこと

 知財担当者としては、まず、発明創出に関係する人々に、

i)特許出願する発明には「新規性」が要求されること、

ii)新規性喪失の例外規定はあるものの万能ではないこと

を十分に説明し、理解してもらうことが必要です。

 特に、発明をした人(発明者)は、自分が発明した内容をついつい人に話したくなるものです(SNSでついつい自慢したくなったりします。)。しかし、特許出願前に発明内容を公開してしまうと新規性がなくなってしまいます。この点、知財担当者はよく説明することを忘れないようにしたいものです。

by 今 智司